梅毒とは?

梅毒はスピロヘータ科トレポネーマ属の細菌(Treponema pallidum subspecies pallidum)による性感染症のことです。近年では感染者数が増えてきており、注意が必要な感染症です。
感染症法では5類感染症に分類されています。

感染原因は?

感染原因は、主として性行為またはオーラルセックス(口を使った性行為)、アナルセックス(肛門を使った性行為)により感染します。皮膚や粘膜の小さな傷から梅毒トレポネーマが侵入することによって感染するとされています。

どんな症状があるの?

潜伏期間は10~90日と言われており、性器周辺に痛みのない小さなしこりのようなものができたり、血行性・リンパ行性に全身に広がり、あらゆる臓器に急性・慢性の炎症を惹起し、全身性に様々な症状を引き起こします。これらの症状がある方は、お早めに当院へご相談ください。

梅毒は感染してからの時間経過によって病期が分けられます。早期梅毒の第1期・第2期、後期梅毒の第3期、陳旧性梅毒です。さらに病期以外の特徴による分類もあります。

早期梅毒

感染してから1年未満の活動性梅毒(治療が必要な梅毒)で、性的接触による感染力が強い時期のことをいいます。

早期梅毒第1期:感染してから1か月前後(遅くとも3か月以内)の活動性梅毒の時期をいいます。症状としては、初期硬結(性器周辺・口唇・口内に痛みのない小さなしこりのようなもの)、硬性下疳(初期硬結の中心部分に潰瘍ができたもの)、びらんなどを認めます。女性では出現頻度が低く、上皮がわずかに剝離している程度のことが多いので見逃されやすく注意が必要です。そして多くの場合、数週間後に痛みのない鼠径部リンパ節腫脹を認めます。

早期梅毒第2期:感染してから1~3か月の活動性梅毒の時期をいいます。症状としては、梅毒性バラ疹、丘疹性梅毒疹、梅毒性乾癬、扁平コンジローマ、梅毒性アンギーナ、梅毒性脱毛、膿疱性梅毒疹などの多彩な所見が、3か月~3年にわたり混在して出現する。梅毒性バラ疹・丘疹性梅毒疹は全身性に,梅毒性乾癬は手掌・足底に, 扁平コンジローマは肛門部・外陰部に,梅毒性アンギーナは口腔内にみられる.

後期梅毒

感染してから1年以上経過した活動性梅毒で、性的接触による感染力はほぼなくなった時期とみなされます。症状は侵されている臓器によってさまざまです。無症状のこともありますが、活動性(要治療)と判断されるものは後期潜伏梅毒に分類されます。
第3期梅毒は後期梅毒のうち、感染してから年余を経て心血管病変、ゴム腫、進行麻痺、脊髄癆などの第3期臓器病変がみられる活動性梅毒のことです。

陳旧性梅毒

梅毒が治癒状態にあると判断されたものをいいます。治癒状態における梅毒抗体の値はRPRは通常低値ですが、梅毒トレポネーマ抗体は様々であり、症状の安定化、梅毒抗体の値の推移などから総合的に判断せざるを得ません。

病期以外の特徴による分類

潜伏梅毒:自他覚症状はありませんが、既往歴・感染リスク・梅毒抗体価の有意な上昇等から要治療と判断される活動性梅毒のことです。RPRの多寡は問いませんが、一般に感染時期から離れるほど、RPR、梅毒トレポネーマ抗体の値はともに高くなります。潜伏梅毒からあらゆる臓器病変の再燃をみることもあります。

罹患臓器別の梅毒:神経梅毒、眼梅毒、耳梅毒、胃梅毒など
※梅毒患者で頭痛、悪心、嘔吐、後部硬直、脳神経病変、痙攣、意識障害、ブドウ膜炎、虹彩炎、難聴などの症状がある場合には神経梅毒の合併を疑い、ただちに高次専門医療機関への紹介が必要となります

先天梅毒:妊娠期梅毒の妊婦からの胎内感染が推定され、かつ、活動性梅毒と判断されるもので、無症状の場合は潜伏梅毒にも該当します。

検査方法(性器の場合)

血清反応による診断法があり、RPRカードテストや凝集法(STS)、Treponema pallidumを抗原とする特異的なTreponema Pallidum Hemagglutination Test(TPHA)法または Fluorescent Treponemal Antibodyabsorption(FTA-ABS)法があります。
まずはスクリーニング検査として血清反応検査(STSとTPHA)を行います。そして血清診断のみでは梅毒の進行期の診断ができないため、臨床経過の確認が重要です。第3期梅毒では梅毒血清反応は弱陽性、または陰性となることもあります。STS陽性でTPHAまたはFTA-ABS陰性の場合は感染初期または生物学的偽陽性反応であり、後者の場合は 自己免疫疾患などの検索を行う必要があります。

当院では梅毒に対して、「当日検査結果がわかる迅速検査」も行っております。
ご希望の方は当院の24時間WEB予約かお電話にてまずはご相談ください。

治療方法

合成ペニシリン製剤の内服あるいは持続性ペニシリン製剤の筋注が第一選択薬となります。
持続性ペニシリン製剤の筋注による治療方法は、以前より国際的標準治療でしたが、日本でも2022年1月より使用可能となりました。ペニシリン系抗菌薬にアレルギーがある場合にはミノサイクリンやスピラノマイシンなどの治療薬を使用します。
当院での具体的な治療方法をお示しします。

  • 第1選択薬(内服薬)
    アモキシシリンを1回500mg 1日3回 
    アンピシリンを1回500mg 1日4回 
    ※第1期の場合2~4週間
    ※第2期の場合4~8週間
    ※第3期以降の場合8~12週間
  • 第1選択薬(筋肉注射薬)
    ベンジルペニシリンベンザチン筋注 1回240万単位 
    ※早期梅毒では1回のみ
    ※後期梅毒では1週間隔で計3回
    ただし、現在当院では取り扱いがありません。
  • ペニシリン系にアレルギーがある場合の治療薬
    ミノサイクリンを1回100mg 1日2回 
    スピラノマイシンを1回200mg 1日6回 
    ※第1期2~4週問
    ※第2期4~8週間
    ※第3期以降8~12週間

梅毒は早期であれば完治することがほとんどです。
外陰部にできものができた際には、早期の検査と治療を心がけましょう。

梅毒治療薬の注意点

治療の初めごろに、ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー(Jarisch-Herxheimer)反応と呼ばれる39℃前後の発熱、全身倦怠感、悪寒、頭痛、筋肉痛、発疹の増悪などがみられることがあります。これは治療開始後数時間でTreponema pallidumが破壊されるために起こります。また投薬8日目ごろから薬疹を起こすこともありますので注意が必要です。

治癒判定方法

STSの定量値が8倍以下を継続することと、臨床症状がなくなったことで治癒と判定します。治療終了後6か月以上して16 倍以上を示す場合は、治療が不十分であるか再感染あるいはHIVの重複感染などが考えられます。HIV検査を行ったうえで再治療を行う必要があります。

HIV検査が推奨される理由

アジアでは近年HIV患者での梅毒が増加しています。日本でも梅毒とHIVの重複感染が10~20%の間で報告されています。梅毒陽性の場合には、HIV検査も受けることが推奨されます。

ここからはQ&Aで分かりやすく解説していきます。

Q1.梅毒にかかるとどのような症状がありますか?

性器周辺に痛みのない小さなしこりのようなものができたり、血行性・リンパ行性に全身に広がり、あらゆる臓器に急性・慢性の炎症を惹起し、全身性に様々な症状を引き起こします。これらの症状がある方は、お早めに当院へご相談ください。

Q2.感染してからどのくらいで症状がでますか?

潜伏期間は10~90日と言われています。そのため血液検査によるスクリーニング検査で異常を認めるには、少なくとも3週間以上は空けてからの検査が推奨されます。

Q3.感染しているか心配ですぐに検査結果を知ることはできますか?

当日20~30分で結果が分かる迅速検査が可能です。
こちらは自費検査となります。

Q4.彼氏が梅毒と診断されました。私は症状がないのですが、検査は必要ですか?

ご自身も検査を受けましょう。性交渉による梅毒の感染率は高いため、パートナーの方が感染している場合、ご自身も梅毒に感染している可能性が高いと考えられます。まずは当院へご相談ください。