麻疹とは

麻疹ウイルスによって引き起こされる疾患で、「はしか」とも呼ばれ、強い感染力を持ちます。
新型コロナウイルスも感染力が高いことで知られていますが、麻疹の場合も麻疹ワクチンを打っていない方が麻疹ウイルスに感染すると、90%以上が発病します。

人から人への感染のうつりやすさも強く、1人感染しているとワクチンを接種していない場合、10~15人程度が感染すると考えられています。

感染経路

感染経路としては空気感染のほか、飛沫や接触感染など様々な経路があります。
免疫を持っていない人が感染すると、ほとんどの確率で発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。

麻疹の症状

麻疹ウイルスに感染すると、10~12日間の潜伏期を経て、発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れ、38℃以上の高熱と発疹が出現します。

1. カタル期(初期症状)

麻疹の初期の段階で、風邪と似たような症状があります。
全身のだるさや38度程度の発熱がある場合もあり、2~4日程度継続して発熱することが多くなります。
結膜炎のような症状が出て、目が赤くなったり、光がまぶしく感じたりすることもあります。
また、口の中に白い点状のコプリック班が見られることもあります。

2. 発疹期

一度発熱が低下した後、再び39度以上の高熱が出ます。
その際に、3~5日程度赤い発疹が見られます。
発疹は、顔を含めた全身に出現します。

発疹と高熱が出る時期は、カタル期より症状が強く、下痢や嘔吐などの症状が出る場合もあります。

ほかの人に感染する感染力があるのは、発熱があり、発疹が出現する4~5日程度と考えられています。

3. 回復期

発疹が出始めてから、3~5日程度で発熱が落ち着いてきて、体調も回復してきます。
カタル症状も軽くなりますが、発疹は色が濃くなり、しばらく皮膚に残ります。

注意が必要な合併症

肺炎

麻疹ウイルスによる合併症だけでなく、抵抗力が低下していることで細菌性肺炎の合併症を引き起こす可能性もあります。

脳炎

麻疹ウイルスによる脳炎も報告されています。
まれなケースになりますが、中枢神経の疾患である亜急性硬化性脳炎(SSPE)を引き起こすことがあります。

麻疹には特別な治療法がないため、予防接種を受けて予防することが大切です。

風疹とは

風疹は、風疹ウイルスによっておこる急性の発疹性感染症です。
発疹が3~5日程度で消失することから、3日はしかともいわれています。
風疹の予防接種をしていない場合、1人の感染で5~7人に感染する強い感染力を持っています。

麻疹とは異なり、感染した場合でも15~30%の方は症状が出ないといわれていますが、重篤な症状が出ることもあります。
特に成人の場合には、症状が悪化しやすいため、高熱が続いたり、関節痛があったりするなど重症化しやすいことが知られています。

また、風疹に対する免疫が不十分な妊娠20週頃までの妊婦さんが風疹ウイルスに感染すると、先天性風疹症候群といわれる難聴や心疾患、白内障などの疾患がある子どもが生まれてくる可能性が高くなります。
妊娠初期に感染するほど、障害が起こる可能性が高まるとされています。

風疹の症状

風疹ウイルスに感染すると、2~3週間の潜伏期間を経て、発熱やリンパ節の腫れなどの症状が現れます。

発熱

初期の症状は、風邪のような症状や微熱が出ることもあります。
発熱と同時に発疹が出るようになります。
熱は数日で落ちつくことが多く、比較的速やかに下がります。

リンパ節の腫れ

風疹を発症した時には、首のリンパ節の腫れが現れます。
首のリンパ節の中でも、特に耳の後ろや後頭部にあるリンパ節が腫れることが特徴です。

発疹

風疹の発疹は、全身の広範囲に出現して、数日で後を残さずに消えることがほとんどです。

注意が必要な合併症

風疹は、小児より大人の方は症状が重くなりやすく、発疹や発熱の期間が長くなる傾向があります。
まれに、脳炎や血小板減少性紫斑症などを引き起こすことがあります。
(2000~5000人に1人程度の割合)

風疹の特別な特効薬はないため、解熱剤や水分補給などの対処療法が必要です。

感染経路

飛沫感染

せきやくしゃみによって、ウイルスが飛び散り、そのウイルスを吸い込むことで感染します。

接触感染

ウイルスが付着しているドアや水道の蛇口など、共有して触る物で感染する場合もあります。

母子感染

妊娠20週以内のお母さんが感染すると、お腹の中で母子感染することがあります。
先天性風疹症候群を持った赤ちゃんが生まれる可能性があり、難聴や心疾患などのリスクがあるため、妊娠を希望している方は風疹の免疫があるかを確認しましょう。

麻疹と風疹の違い

感染経路

麻疹は「空気感染」

麻疹は感染者がくしゃみや咳をして、空気中に飛散したウイルスが長時間空中を浮遊し空気の流れによって広範囲に拡散し、その飛沫核を感受性のある人が吸入することによって感染します。

ウイルスは感染力が強いため、学校や空港などの公共の場所でかんたんに広がります。
マスクや手洗いだけでは、完全に麻疹を予防することは難しいと考えられています。

風疹は「飛沫感染」「接触感染」

風疹は、感染者がくしゃみや咳をして、それを吸い込んだり、ドアなどで接触したりすることで感染します。マスクや手洗いなどで予防効果が見込めます。

症状の違い

麻疹も風疹もどちらも発疹が出る点は似ていますが、麻疹の方が症状は重くなりやすいです。

麻疹

麻疹ウイルスに感染すると、10~12日間の潜伏期を経て、発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れ、38℃以上の高熱と発疹が出現します。
発疹はすぐには消えずに、1ヶ月程度ほどで完全に消えます。
合併症の可能性として、脳炎や肺炎を引き起こすことがあります。

風疹

風疹は、感染後2~3週間の潜伏期間を経てリンパ節の腫れや発疹が出現しますが、半数程度の方が発熱しないです。
また、発疹も3~5日程度で消えることが多くなります。
風疹は、麻疹と比較すると、症状が軽い特徴がありますが、妊娠初期の方が感染をすると、赤ちゃんに重大な影響を及ぼす可能性があります。

麻疹風疹混合ワクチン(MR)

麻疹・風疹のワクチンはMRとも呼ばれ、麻疹も風疹も予防する効果が見込めます。
麻疹や風疹の単独のワクチンもありますが、現在では、2種類のワクチンが混合したものが主流になっています。

ワクチンの種類

ワクチンは「生ワクチン」で、麻疹ウイルスと風疹ウイルスを弱毒化した物が含まれています。
ワクチンを接種することで、抗体を作り、麻疹・風疹の重症化を防ぐ効果や予防効果が期待できます。

妊活の数か月前に抗体検査を推奨

麻疹・風疹ワクチンは妊娠中には摂取することができません。
また女性に接種する場合は、接種前1か月および接種後2か月は避妊する必要があります。

妊活前に余裕を持って抗体検査を受け、抗体がなければ早めのワクチン接種を受けましょう。

なお男性に接種する場合は、避妊の必要はありません。
ご家族から感染する可能性もあるため、同居されているご家族の方も赤ちゃんのために風疹の予防接種をしましょう。

麻疹・風疹ワクチンの副反応

麻疹・風疹のワクチンは、ほかのワクチンと比較して特別副反応が多いわけではありませんが、接種部位の発赤や発熱や発疹がみられることもあります。

麻疹・風疹ワクチンを接種できない方

  • 妊娠している方
  • 接種前1か月および接種後2か月は避妊(女性)
  • 発熱をしている方
  • 麻疹・風疹ワクチンでアナフィラキシーの症状があった方
  • 重篤な疾患がある方

上記の方は、MRワクチンを受けることができませんので、ご了承ください。

【まとめ】

麻疹も風疹もMRワクチンを接種することで、ほとんど予防ができる疾患です。
大人になってから感染をすると、症状が強く出る場合もあるため、予防接種を受けていない方は積極的なワクチン接種をおすすめします。

特に、妊娠を希望している女性は、抗体を持っているか妊活前には確認することを推奨します。
妊娠初期に風疹にかかると、赤ちゃんに重篤な悪影響が出る場合があります。
抗体がない場合には、早めにワクチン接種を受けましょう。

当院では、連日多くの男性ならびに女性の患者様が麻疹風疹混合ワクチンを接種されにご来院されています。ご希望の方はお気軽にご相談ください。