HPVワクチンとは?
(子宮頸がんワクチン)

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)とは、子宮頸がんなどのHPVが原因でおこる疾患を予防するワクチンのことです。
子宮頸がんのほとんどは、HPV(=ヒトパピローマウイルス)の感染が原因であることが分かっています。
現在日本では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約2800人の方が死亡しています。
さらに2000年以降、子宮頸がんにかかっている方は増加の一途をたどっています。

HPVが感染する原因

子宮頸がんの原因となるHPVは、性交渉により子宮頸部(子宮の入り口)に感染します。
そのため、性交経験のある女性の過半数は一生に一度は感染機会があるといわれています。
ただしHPVに感染しても必ずしも子宮頸がんになるわけではありません。

およそ90%の人においては免疫力などでHPVが自然に排除され、残りの10%の人においてはHPVが長期間持続感染します。
このうち自然治癒しない一部の人の中で、異形成と呼ばれる前がん病変となり、さらには数年以上をかけて子宮頸がんに進行していきます。

子宮頸がんを予防するためには

子宮頸がんを予防するためには、子宮頸がんの原因であるHPVの感染を予防し、子宮頸がんの発症を防ぐことが大事です。
HPVワクチンの接種と定期的な子宮頸がん検診を推奨します。

ワクチン接種は何歳が対象?

日本では小学6年生~高校1年生(12歳~16歳)の女性が対象なっており、定期接種(無料で接種)が行われています。
ただし、接種の勧奨差し控えのために定期接種をうけられなかった1997年度~2005年度生まれの9学年の女性に対しては、2022年4月から3年間、無料で接種が可能です。

接種する年齢が早い理由は?

性交渉を経験する前にHPVワクチンを接種することで、性交渉によるHPV感染を防ぐことが期待されるためです。
さらにワクチンに対する免疫応答が思春期では特に良いため、ワクチンの効果を最大限活かすことができます。

大人が接種しても効果はあるの?

大人になってからでも、特に26歳までの女性は推奨されています。
さらに性交未経験の女性では14歳までの女性と同等のワクチン効果が見込まれます。
ワクチンの添付文章では接種年齢の上限は書かれていませんが、45歳までの接種には有効性が認められています。

子宮頸がん検診で異常があった後でも、接種の意味はあるの?

HPV検査が陽性であっても、感染したHPVの型以外であればワクチンの効果が期待できます。
ただし、すでにあるHPV感染を治療する効果はありませんので、定期的な子宮頸がん検診が必要となります。

HPVの型とは?

HPVには100種類以上の型があります。
その中で、がんと関係があるものは13~14種類の型です。
この中でも、最もがんのリスクが高いものがHPV16型・18型です。
そのため、すべてのHPVワクチンには16型・18型が含まれています。

HPVワクチンの種類の違いは?

国内で承認されているHPVワクチンは2価と4価と9価の3種類があります。
当院では、ガーダシルとシルガード9を取り扱っております。

  • 2価ワクチン(サーバリックス)
    HPV16型・18型
  • 4価ワクチン(ガーダシル)
    HPV6型・11型・16型・18型
    ※6型・11型は尖圭コンジローマという性病の予防になる
  • 9価ワクチン(シルガード9)
    HPV6型・11型・16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型

当院では、「HPVワクチンの接種」ならびに「子宮頸がん検診」を受けていただきやすい環境を提供しております。
HPVワクチンの接種をご希望の方は、9:30-12:30/14:30-17:30であればご予約不要ですので、直接ご来院ください。

2価・4価・9価の予防効果は?

2価・4価ワクチンにより60~70%、9価ワクチンにより約90%の子宮頸がんを予防できると考えられています。

これまでは国内の定期接種としては2価・4価ワクチンのみが使用されておりましたが、2023年4月より9価ワクチンについても公費での接種が可能となりました。

子宮頸がん以外にも予防できる疾患はあるの?

4価と9価のHPVワクチンに関しては、尖圭コンジローマ(=外陰部や腟、尿道口、肛門などにイボのようなぶつぶつができる性病)を予防できます。
その他にも、外陰がんや腟がん、肛門がんなどのHPV関連疾患に対しても予防効果が示されています。

男性もHPVワクチン接種を推奨

HPVはもちろん男性から女性、女性から男性へ感染します。

そのため男性にもHPVワクチンを打つことで、性行為による感染を防ぐことができます。
日本では、9歳以上の男性であれば4価ワクチンを接種することが承認されています。
咽頭がん、口腔がん、陰茎がん、肛門がんなどの男性のHPV関連疾患に対して予防効果が示されています。
男性も女性と同様、45歳までの接種は効果があると認められています。

当院では、男性のHPVワクチン接種も積極的に行っております。
HPVワクチンの接種をご希望の方は、9:30-12:30/14:30-17:30であればご予約不要ですので、直接ご来院ください。

海外でのワクチン普及率

フィンランドやスウェーデン、イギリスなど世界各国からの報告で、HPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果は明らかになっています。
オーストラリアではHPVワクチンと子宮頸がん検診が最も成功しており、2028年には世界に先駆けて新規の子宮頸がん患者はほぼいなくなるといわれています。
海外では、100ヵ国以上で男性へのHPVワクチン接種が認可されており、男性への定期接種を開始している国もありますが、日本では現在のところ自己負担となります。

欧州の多くの国で約80%の接種率がある一方、日本においては約0.6%という状況です。世界的ながんの予防の流れから取り残されないよう、日本でも積極的なワクチン接種が推奨されます。

頻度の高い副反応とは?

頻度の高い副反応としては、注射部位の一時的な疼痛・腫脹・紅斑などの局所症状があります。
また、注射時の痛みや不安のために失神(迷走神経反射)を起こした事例が報告されており、接種後30分程度の安静が推奨されています。

当院では、ワクチン接種後の30分間は、院内にて経過観察をさせていただいております。
HPVワクチンの接種をご希望の方は、9:30-12:30/14:30-17:30であればご予約不要ですので、直接ご来院ください。

頻度は低いけれど、重大な副反応とは?

頻度は低いけれど可能性のある重大な副反応としては、過敏症反応(アナフィラキシー、蕁麻疹、気管支痙攣など)、ギランバレー症候群(手足の力が入りにくいなど)、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳脊髄炎が挙げられていますが、発生数そのものが少ないため、発生頻度は不明です。
またHPVワクチンの積極的な勧奨の差し控えに影響があったHPVワクチン接種後に報告された慢性的な痛みや運動機能の障害などについては、その後の調査研究でHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されず、厚生労働省研究班の全国疫学調査の結果でもHPVワクチン接種後におこる特有の症状ではないことが示されました。
ただし、これらの症状がすべて副反応である可能性が否定されたわけではなく、接種に伴う様々なストレスが、このような症状を引き起こすきっかけになることもあると考えられています。

もし接種後に心配な症状がある場合には、接種を受けられた医療機関や全国85医療機関(全ての都道府県)に診療相談窓口が設置されていますので、必要に応じてご相談ください。

ここからはQ&Aで分かりやすく解説していきます。

Q1.HPVワクチンは何歳が対象ですか?

日本では小学6年生~高校1年生(12歳~16歳)の女性が対象となっており、定期接種(無料で接種)が行われています。
ただし、接種の勧奨差し控えのために定期接種をうけられなかった1997年度~2005年度生まれの9学年の女性に対しては、2022年4月から3年間、無料で接種が可能です。

Q2.なぜ接種時期がこんなに早い年齢なのですか?

性交渉を経験する前にHPVワクチンを接種することで、性交渉によるHPV感染を防ぐことが期待されるためです。
さらにワクチンに対する免疫反応が思春期では特に良いため、ワクチンの効果を最大限活かすことができます。

Q3.大人になってから接種しても効果はありますか?

大人になってからでも、特に26歳までの女性は推奨されています。さらに性交未経験の女性では14歳までの女性と同等のワクチン効果が見込まれます。ワクチンの使用についての添付文章では、接種年齢の上限は書かれていませんが、45歳までの接種は効果があると認められています

2020年スウェーデンで167万人規模で行われたHPVワクチンによる浸潤子宮頸がんの減少効果を示した研究によると、ワクチン接種をしていない人たちと比べて、17歳になる前に接種を受けた女性では88%の減少効果、17歳から30歳で受けた女性では53%の減少効果が認められました。

Q4.子宮頸がん検診で異常があった後でも、接種の意味はありますか?

HPV検査が陽性であっても、感染したHPVの型以外であればワクチンの効果が期待できます。
ただし、すでにあるHPV感染を治療する効果はありませんので、定期的な子宮頸がん検診が必要となります。

Q5.HPVには種類がありますか?

HPVには100種類以上の型があり、そのうちがんと関係があるものは13~14種類の型です。

この中でも、最もがんのリスクが高いものがHPV16型・18型です。

Q6.HPVワクチンにはどのようなものがありますか?

国内で承認されているHPVワクチンは2価と4価と9価の3種類があります。

2価ワクチンは子宮頸がんの主な原因となるHPV16型・18型の2つの型に対するワクチンです。
4価ワクチンは16型・18型に加え、尖圭コンジローマという性病の原因になる6型・11型の4つの型に対するワクチンです。
9価ワクチンは2価・4価ワクチンに加え31型・33型・45型・52型・58型も加えた9つの型に対するワクチンです。

Q7.HPVワクチンの種類によって違いはありますか?

2価・4価ワクチンにより60~70%、9価ワクチンにより約90%の子宮頸がんを予防できると考えられています。

これまでは国内の定期接種としては2価・4価ワクチンのみが使用されておりましたが、2023年4月より9価ワクチンについても公費での接種が可能となりました。

Q8.HPVワクチンには子宮頸がん以外にも予防できる疾患はありますか?

4価と9価のHPVワクチンに関しては、尖圭コンジローマ(=外陰部や腟、尿道口、肛門などにイボのようなぶつぶつができる性病)を予防できます。
その他にも、外陰がんや腟がん、肛門がんなどのHPV関連疾患に対しても予防効果が示されています。

Q9.男性もHPVワクチンを接種するメリットはありますか?

咽頭がん、口腔がん、陰茎がん、肛門がんなどの男性のHPV関連疾患に対して予防効果が示されています。
日本では、9歳以上の男性であれば4価ワクチンを接種することが承認されています。
男性も女性と同様、45歳までの接種は効果があると認められています。
海外では100ヵ国以上で男性へのHPVワクチン接種が認可されており、男性への定期接種を開始している国もありますが、日本では現在のところ自己負担となります。

Q10.HPVワクチンによる副反応はありますか?

頻度の高い副反応としては、注射部位の一時的な疼痛・腫脹・紅斑などの局所症状があります。
また、注射時の痛みや不安のために失神(迷走神経反射)を起こした事例が報告されており、接種後30分程度の安静が推奨されています。
その他に可能性のある重大な副反応として、過敏症反応(アナフィラキシー、蕁麻疹、気管支痙攣など)、ギランバレー症候群(手足の力が入りにくいなど)、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳脊髄炎が挙げられていますが、発生数そのものが少ないため、発生頻度は不明です。
またHPVワクチンの積極的な勧奨の差し控えに影響があったHPVワクチン接種後に報告された慢性的な痛みや運動機能の障害などについては、その後の調査研究でHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されず、厚生労働省研究班の全国疫学調査の結果でもHPVワクチン接種後におこる特有の症状ではないことが示されました。
ただし、これらの症状がすべて副反応である可能性が否定されたわけではなく、接種に伴う様々なストレスが、このような症状を引き起こすきっかけになることもあると考えられています。

もし接種後に心配な症状がある場合には、接種を受けられた医療機関や全国85医療機関(全ての都道府県)に診療相談窓口が設置されていますので、必要に応じてご相談ください。

参考文献:厚生労働省HP、日本産婦人科学会HP、日本婦人科腫瘍学会HP、周産期医学(Vol.51 No.12 2021 December,ワクチンの進歩と重要性)