性器ヘルペスとは?
性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)1型(HSV-1)または2型(HSV-2)の感染により、性器に潰瘍性または水疱性病変を形成する病気です。
どんな症状があるの?
「初感染初発」、「非初感染初発」、「再発」によって症状が少し変わります。性器ヘルペスの基本的な症状としては、外陰部に潰瘍性または水疱性病変などを認めます。これらの症状がある方は、お早めに当院へご相談ください。重症化する前に、早期の治療を心がけましょう。
初感染初発
- 性行為などで初めてHSVに感染し、病気が発症した場合を指します
- 典型例では症状が強く、性的接触後2~10日間の潜伏期を経て、突然発症し38℃以上の発熱や倦怠感などの全身症状を伴うことがあります
- 大陰唇・小陰唇から腟前庭部・会陰部にかけて、浅い潰瘍性または水疱性病変が多発します
- 疼痛が強く、排尿が困難で、ときに歩行困難になり、ほとんどの症例で鼠径リンパ節の腫脹と圧痛を認めます
- まれに強い頭痛・項部硬直などの髄膜刺激症状を伴うことがあり、排尿困難や便秘などの末梢神経麻痺を伴うこともあります
非初感染初発
- 以前の性行為などでHSVに感染していたものの不顕性感染(=症状がなく、病気を発症していない状態)となり、免疫力が低下したタイミングなどで病気が発症した場合を指します
- これはHSVが一度感染すると知覚神経節に潜伏感染してしまい、体から完全に排除されないためです
- 初感染例に比べて症状は軽いことが多いですが、同様の症状を認めます
再発
- 以前に病気を発症し治癒したものの、免疫力の低下を契機に再び病気を発症してしまう場合を指します
- 症状は軽く、性器または殿部や大腿部に小さい潰瘍性または水疱性病変を数個形成するだけのことが多いです
- 再発する前に外陰部の違和感や、大腿から下肢にかけて神経痛様の疼痛などの前兆などを訴えることもあります
ヘルペスの特徴とは?
一度治っても、免疫力が低下した時などに再発を繰り返す点が特徴的です。
臨床的には初発と再発に分類され、初発は初感染初発と非初感染初発に分かれます。後者は潜伏感染していたHSVの再活性化によります。
日本女性の初感染ではHSV-1とHSV-2が同程度かHSV-1が多く、再発例のほとんどからはHSV-2が検出されます。
検査方法
病歴、臨床症状、局所所見に基づいた臨床診断を行います。
さらに診断補助キットを用いて、水疱や潰瘍またはびらん中のHSV抗原の迅速な検出を行うこともあります。ただし、この診断補助キットの感度は100%ではないため、結果が陰性であったとしてもHSV感染を完全に否定することはできません。
そのため病歴、臨床症状、局所初見による臨床診断が最重要となります。
当院では性器ヘルペスに精通した産婦人科医が診察しております。
ご希望の方は当院の24時間WEB予約かお電話にてまずはご相談ください。
治療方法
抗ウイルス薬の内服が有効で、HSVの増殖を抑制し治癒までの期間を短縮します。
アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルを使用します。5%アシクロビルや3% ビタラビン軟膏を塗布する方法もありますが、ウイルス排泄を完全に抑制できず、病期も短縮させないため、内服治療が第一選択となります。
当院での具体的な治療方法をお示しします。
軽症・中等症の場合
- バラシクロビル500mgを1回1錠 1日2回 5日間内服
※初発では10日間まで内服追加が可能 - ファムシクロビル250mgを1回1錠 1日3回 5日間内服
再発抑制療法の場合
- バラシクロビル500mgを1回1錠 1日1回 1年間内服
頻回に再発を繰り返す場合には、バラシクロビルによる再発抑制療法が有効です。
抑制療法中に再発した場合はバラシクロビルを一時的に再発治療量(1回1錠 1日2回 5日間まで)に増量します。1年間服用の後、さらに再発した場合には、相談の上で抑制療法を再開します。
再発時の早期短期療法の場合
- ファムシクロビル250mgを1回4錠 1日2回 1日間内服
以前より海外では標準的治療であった本人が初期症状を自覚した時点でファムシクロビル1000mgを1日2回内服する投与方法が、日本でも保険処方が可能となりました。
再発性の単純疱疹に対する抗ヘルペスウイルス薬の内服は、発症してからの内服が早ければ早いほど治療効果が高いことが示されていましたが、ほとんどの方が初期症状の時点では医療機関を受診できていないということが現状でした。ファムシクロビルの早期短期療法により、初期症状を正確に自覚できる方に対しては、再発早期の治療が可能となりました。
性器ヘルペスは発症後の治療が早ければ早いほど、治療効果が高いことが実証されています。外陰部に潰瘍性または水疱性病変などがあった際には、当院の24時間WEB予約かお電話にてまずはご相談ください。
高熱や排尿困難、歩行困難が著名で全身状態が非常に重症な場合には、入院が必要になるケースもあります。アシクロビルによる点滴治療を数日間行うこととなります。
パートナーとの性行為について
ヘルペスを発症している時には、潰瘍部や水疱にはたくさんのヘルペスウイルスが存在しています。そのため性行為により浸出液が付着し、パートナーに感染する可能性があります。浸出液が付着すると、性器はもちろん、肛門や殿部や大腿部などにも発症することがあるため注意が必要です。
パートナーへの感染を防止するためにも、性行為はしっかりと治ってから行うようにしましょう。
ここからはQ&Aで分かりやすく解説していきます。
Q1.性器ヘルペスにかかるとどのような症状がありますか?
基本的には性器周辺に潰瘍性または水疱性病変を認めます。ただし、初感染初発か、非初感染初発か、再発で症状が少し違います。初感染初発典型例では全身症状を伴うこともあるほど症状が強く、非初感染初発例では初感染例に比べて症状は軽いことが多いですが、同様の症状を認めます。再発例では症状は軽く、性器周辺に小さい潰瘍性または水疱性病変を数個形成するだけのことが多いです。再発する前には外陰部の違和感や、大腿から下肢にかけて神経痛様の疼痛などの前兆などを訴えることもあります。
Q2.これまでに何度も再発をしており、またいつ再発するか心配です。何かできることはありませんか?
HSVに一度感染すると完全には体から排除することができません。そのためできる限り再発をしないよう、規則的な生活を心がけ、免疫力の低下を招かないようにしましょう。また漢方(補中益気湯)が再発抑制に奏効したという報告もあります。いずれにしても再発を繰り返してしまう方にとっては、精神的にも身体的にもとてもつらい思いをされていることかと拝察いたします。もしお困りの方がいらっしゃいましたら、まずはご相談いただき、再発抑制療法や再発時の早期短期療法などを試されることをお勧めいたします。
Q3.再発でヘルペスを発症している場合、コンドームをつけていれば性行為はできますか?
ヘルペスを発症している時、潰瘍部や水疱にはたくさんのヘルペスウイルスが存在しています。パートナーがコンドームを使用し、予防策をすることは勧められますが、浸出液が付着したり、肛門や殿部や大腿部などにも発症しうるため、完全には感染を防止できません。パートナーへの感染を防止するためにも、性行為はしっかりと治ってから行うようにしましょう。
Q4.再発抑制療法中に再発した場合はどうすればよいですか?
抑制療法中に再発した場合はバラシクロビルを一時的に再発治療量(1回1錠 1日2回 5日間まで)に増量します。1年間服用の後、さらに再発した場合は、相談の上で抑制療法を再開します。ガイドライン上も長期服用による重大な副作用はみられていません。
Q5.ヘルペス治療薬を飲めばすぐに治りますか?
ヘルペス治療薬には病期を短縮させる効果があります。そのため、内服してもすぐに治るわけではなく一定の期間をかけて治癒していきます。発症してからの内服が早ければ早いほど治療効果が高いため、症状を自覚した際は、お早めに当院へご相談ください。