不妊症とは

不妊症とは、一般的に妊娠を希望して1年以上性生活を行っているにもかかわらず妊娠に至らない場合のことをいいます。

これまで全く病気とは無縁で病院を訪れることのなかったカップルにとっては、なかなか妊娠に至らない場合、不妊症ではないかと大きな不安をお持ちになる方もいらっしゃると思います。
まずはご自身の身体が健康であることを確認し、人生のプランをたてるためにも、妊娠に向けての第一歩を踏み出していきましょう。

不妊症の頻度

不妊症のカップルは約10組に1組と言われています。
最近の統計では、年齢別の不妊症の頻度は20代前半では5%以下、20代後半でおよそ9%、30代前半では15%、30代後半で30%、40歳以上では60%以上です。
結婚年齢の上昇とともに早期の医学的介入が必要となるケースが多くみられており、2022年4月からは人工授精や体外受精の保険適応が始まるなど、大きな転換期を迎えています。

不妊症の原因

不妊症の原因は、女性側、男性側、あるいはその両方にある場合があります。
女性では、内分泌・排卵因子、卵管因子、子宮因子、頸管因子、免疫因子などがあります。
男性では、造精機能障害、精路通過障害、性機能障害などがあります。
また、特定の原因が見つからならい場合もみられます。

内分泌・排卵因子

通常、生理が順調な女性の場合には生理の約2週間前に排卵が起こります。
排卵とともに女性ホルモンの分泌が変化し、その影響で子宮内膜も厚くなり、妊娠に向けての準備が進みます。
もし妊娠が成立しなければ子宮内膜は剥がれ落ちて、いわゆる生理になります。

しかし、生理不順の方の場合、生理のような出血があっても排卵を伴わないことがあります。
排卵がなければ妊娠は起こりません。

排卵が起こらない原因には、甲状腺などの女性ホルモンを出す仕組みに影響を与える疾患や、肥満または体重減少、多嚢胞性卵巣症候群(男性ホルモンが高くなるホルモンバランスの異常)などがあります。
さらに全く生理が来ない場合、まれに早発閉経(40歳未満で自然と閉経になってしまう)の方もおられます。

卵管因子

卵管は精子と卵子が出会い、受精卵が再び子宮に戻るための大事な通り道です。
クラミジア感染症にかかったことがある方で、ほとんど無症状のうちに卵管が詰まっていることもあります。
ひどい生理痛がある方の場合、子宮内膜症が潜在していることがあり、この子宮内膜症の病変によって卵管周囲の癒着が起こり、卵管が詰まってしまう場合もあります。
卵管が炎症などによって詰まっていると、妊娠は起こりにくくなります。

子宮因子

受精卵は卵管内で成長しながら子宮に向かって移動します。
子宮に到達した受精卵は子宮内膜に着床しますが、子宮内膜の状態が良好でないと、受精卵の着床がうまく起こりません。
子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどによる物理的な着床不全や、子宮の先天的な形態異常などによる子宮内膜の血流不全、子宮内の過去の手術や炎症による癒着などが原因となります。

頸管因子

子宮頸管とは子宮の入り口部分のことをいいます。
精子が子宮の中に入ってくる際に、一番はじめの部分になります。
性病などで頸管炎を起こしていたり、頸管ポリープなどがあると精子の通りを妨げてしまうことがあります。
そうすると精子は子宮内に侵入しにくくなり、妊娠が起きにくくなります。

免疫因子

人間には、細菌やウイルスなどの外敵と闘い自分を守るための免疫という仕組みがあります。
異物の侵入を容易に許容しないための大切な仕組みですが、時に抗体といわれる免疫の力で精子を攻撃してしまうことがあります。
抗精子抗体(精子を攻撃する抗体)を持つ女性の場合、子宮頸管や卵管の中で抗精子抗体が分泌され精子の運動性が失われ、卵子に到達できず、妊娠が起こりにくくなります。

造精機能障害

精子の数が少ない、または無い、あるは精子の運動性などの性状が悪いと、妊娠しにくくなります。
また、特に原因はなくても精子が作られない場合もあります。
男性因子の中では造精機能障害が最も多く、全体の80%~90%を占めます。

精路通過障害

作られた精子がペニスの先端まで通るための道が途中で詰まっていると、射精はできても精子が排出されないため、妊娠に至りません。
過去に性感染症やその他炎症性疾患にかかり精巣上体炎などがあると、精子を運ぶ精管が詰まってしまう場合があります。

性機能障害

勃起障害(ED)、腟内射精障害など、セックスで射精できないものをいいます。
一般的にはストレスや妊娠に向けての精神的なプレッシャーなどが原因と考えられています。
原因の中には、糖尿病などの病気が隠れている場合もあり注意が必要です。

加齢による影響

男女ともに、加齢により妊孕性は低下することが分かっています。
女性は30歳を過ぎると自然に妊娠する確率は減り、35歳を過ぎると著明な低下を来たします。
加齢により子宮内膜症や子宮筋腫などの合併が増えること、卵子の質の低下が起こることがなど妊孕性低下の原因と考えられています。
男性は、女性に比べるとゆっくりですが、35歳ごろから徐々に精子の質の低下が起こります。

不妊症の方に必要な検査

当院ではじめに行う検査としては、基礎体温測定、超音波検査、内分泌検査、クラミジア核酸増幅検査・抗体検査、頸管因子検査があります。
その他、血圧測定、血糖検査、血算、生化学検査、尿検査、風疹抗体価検査などを行います。

基礎体温測定

基礎体温測定は排卵や黄体機能を簡易的に評価でき、ご自身でもできる検査であるためとても有用です。
妊娠を意識はじめた方や生理不順の方はできる限りつけるようにしましょう。

超音波検査

超音波検査は子宮および卵巣の状態観察に必須です。
器質的病変の有無の精査に用いられます。
さらに卵胞の発育チェックには欠かせない検査です。

内分泌検査

内分泌検査としては、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、エストラジオール(E2)、乳汁分泌ホルモン(PRL)、プロゲステロン(P4)、テストステロン(T)、甲状腺ホルモン(TSH、FT4)測定などがあります。
卵巣機能評価に加え、排卵障害や生理不順が認められる方、多囊胞性卵巣症候群(PCOS)や黄体機能不全が疑わしい方においては、これらで異常を示すことがあります。

クラミジア核酸増幅検査・抗体検査

子宮頸管クラミジア核酸増幅検査は、検査時点でのクラミジア感染の有無の診断に有用ですが、腹腔内の感染症例では感染を確認できないことがあります。
クラミジア抗体検査(IgG、IgA)は過去のクラミジア感染を調べることができ、治療歴のない抗体陽性例や現在の感染が否定できない場合には、配偶者ともに治療を受けていただくことがあります。

頸管因子検査

頸管炎やポリープなどがないかを確認します。
さらには頸管粘液と精子との適合を評価したり、抗精子抗体といって精子に対して抗体を持っている方もおり、人工授精や顕微授精が推奨される場合があります。

卵巣予備能

卵巣予備能の指標となる内分泌検査として、AMH(抗ミュラー管ホルモン)があります。
AMHは卵巣内にどれくらい卵の数が残っているかを反映します。
月経周期に関係なくほぼ一定であるため、いつでも採血するだけで測定することができます。
一般的に年齢とともに低下しますが、個人差も非常に大きく、早発閉経や多嚢胞性卵巣症候群などの診断にも役立ちます。

当院での治療の流れ

まずは先ほど挙げた検査を行い、不妊症となっている原因を調べます。
そして検査結果を踏まえ治療方針を立てます。
当院では、タイミング療法、排卵誘発までの治療を行っております。
ご年齢や検査の結果次第では、当院と連携している英ウィメンズクリニック・英メンズクリニックやご希望の不妊症治療専門クリニックへご紹介させていただくこともあります。
おひとりで悩まずに、まずはご相談ください。

また不妊症の原因は、男女それぞれ半分ずつにあるとも言われています。
当院では、男性の感染症検査も行うことが可能であるためパートナーの方とお二人で受診していただき、一緒に検査と治療を受けていただくことができます。
なお男性お一人での受診はできませんので、ご注意ください。

ここからはQ&Aで分かりやすく解説していきます。

Q1.不妊症の検査にはどのようなものがありますか?

不妊症検査には女性側と男性側の検査がそれぞれあります。
当院での女性側の検査では、基礎体温測定、超音波検査、内分泌検査、クラミジア核酸増幅検査・抗体検査、頸管因子検査などがあります。
当院の男性側の検査では、クラミジアなどの感染症検査を調べます。
その他、血圧測定、血糖検査、血算、生化学検査、尿検査、風疹抗体価検査などを行います。

Q2.痛みを伴う検査はありますか?

基本的には血液検査やおりもの検査、超音波検査などのため痛みを伴う検査はありません。
不妊症の方にとっては必要な検査となりますが、中には痛みに弱い方や検査が苦手な方もいらっしゃると思いますので、一緒に相談させていただきながら、必要な検査を選択していきます。
不妊症の検査や治療となると、どうしても敷居が高く感じたり、なかなか一歩が踏み出せない方も多くいらっしゃると思いますが、当院ではそういった方が気軽に相談していただける窓口として存在しています。
ひとりで悩まずに、どんなことでも結構ですので、ご相談ください。

Q3.男性と同伴でも大丈夫ですか?

大丈夫です。不妊症は男女双方に原因があることが少なくありません。
当院では、男性の感染症検査を行うことが可能であるためパートナーの方とお二人で受診していただき、一緒に検査と治療を受けていただくことができます。
ただし、男性お一人での受診はできませんので、ご注意ください。